ハチ、コワイですよね。
山間部に住んでいるんですが、山道を歩くと耳元に「ヴヴヴヴヴ」っと羽音が聞こえてビビり倒すことがよくあります。
スズメバチはもちろん、クマバチやアシナガバチもコワイですね~。蜜を吸うハチは白い色を好むので、洗濯物に紛れ込んで室内に入ってくるんですよ。大騒ぎですよ。
しかし、ハチの仲間は世界中に13万種類!!
我々日本人には及びもつかない多彩なハチがいるんです!
その中でも、
「もっとも美しくもっとも恐ろしいハチ」
をご紹介しましょう。
(若干の閲覧注意)
キレイでしょ~? エメラルドというだけある美しい光沢ですね~。なんか一緒に不快害虫が写りまくってますけど気にしないでくださいね~!
いやあ体型もスマートですし、脚のつけ根にワンポイントでオレンジが入っているのもオシャレ! アンニュイな触角もキレイですね~。
こんなに美人(虫ファン基準)なエメラルドゴキブリバチですが、そのヴィジュアルの良さよりも、隠された「身の毛もよだつ習性」によってその名を轟かせています。
今回は「美しく残酷な寄生バチ」エメラルドゴキブリバチを見ていきましょう。
・寄生虫でもある「エメラルドゴキブリバチ」。こんなのどこを生息地としているの?
エメラルドゴキブリバチは、
「ハチ目セナガアナバチ科セナガアナバチ属」
に属するハチです。
成虫の大きさは2センチほどで、ニホンミツバチの2倍ほど、アシナガバチと同じくらい、オオスズメバチの半分くらいの大きさ。要するにハチとしては標準的なサイズといえますね。
ミツバチやスズメバチのように大きな巣を作って社会生活を行うタイプではなく、単独で生活しています。こういった単生のハチは多く、ジガバチやベッコウバチなど、スズメバチやミツバチより若干マイナー気味なものですが日本にも非常にたくさんいます。
そして、その多くの幼虫は「寄生性」なのです。
はい、序文やらでかなりネタバレしてしまいましたが、
エメラルドゴキブリバチは「寄生バチ」。
しかもなかなかエグい寄生っぷりを見せる毒婦(ヴァンプ)!!
・エメラルドゴキブリバチの手口
エメラルドゴキブリバチは、名前の通りゴキブリが標的。
2センチくらいのエメラルドゴキブリバチは、4~5センチほどのゴキブリに戦いを挑みます。ゴキブリも攻撃されて暴れますが、ハチに致命傷を与えるような攻撃を持っていないゴキブリ。毒針をブッ刺されてしまいます。
このとき、エメラルドゴキブリバチはマヒ毒を注入! ゴキブリをマヒさせて動けない状態にします。このマヒ毒はあくまでゴキブリを一時的に無力化するもの。
本命は2発目です。
動けなくなったゴキブリの頭部にじっくりと狙いを定め、2発目の毒を打ち込みます。
脳の「逃避反射」を司る部位に正確に突き刺された毒針により、ゴキブリは正常な能力を失ってしまいます。
なぜかゴキブリは体をキレイにみづくろいし、ハチによって触角を噛みちぎられてもノーリアクション。体液をチューチュー吸われてしまいます。
この行動は未だ完全解明されてはいないのですが、ゴキブリを死なない程度に弱らせ、毒が抜けにくいようにしていると考えられています。
・洗脳されたゴキブリの運命(さだめ)
危険を感知する能力を失ったゴキブリ。自分の半分ほどの大きさのエメラルドゴキブリバチに導かれるまま巣穴に引っ張られていきます。
巣穴に到着すると、ハチはゴキブリのお腹に卵を産み付け、巣穴を塞いでから飛び立っていきます。もう二度と戻ってくることはありません。またどこかで同じようにゴキブリを洗脳するのでしょう。
卵を産み付けられて監禁されたゴキブリはのんびり過ごします。お腹あたりがモゾモゾしてもボケっとしてます。脳がのんびりしちゃってますからね。
3日後、ハチの卵から孵化した幼虫はゴキブリの腹を食い破って体内に侵入、ゴキブリが死なない程度に内蔵をムシャムシャ食べて大きくなります。
たくさん食べて大きくなった幼虫はそのままゴキブリの中で蛹になり、体内で成虫になり、用済みのゴキブリ……いやゴキブリ「だったもの」をバキバキ破壊しながら飛び立つのです。
……怖い。
ゴキブリを生きたまま洗脳し幼虫のエサにするなんて、怖気を震うおっそろしい生態ですよね~!! シンプルに怖い。
ちなみにですが、エメラルドゴキブリバチは世界の広い範囲、インドなどの南亜、アフリカなど熱帯に生息しています。日本では見られないですね~。
しかし、非常に似た生態を持つ「セナガアナバチ」が暖かい地域に生息しています。こちらもメタリックカラーの青いボディを持つ美しいハチで、幼虫のエサとしてゴキブリを獲物にしています。身近にこんな暗黒な昆虫がいるだなんて思わなかったでしょ?
※次ページ、まだまだ奥深い「エメラルドゴキブリバチ」の世界!!