えー、以前「スズメバチ」を紹介しました。
非常に恐ろしいスズメバチ、しかしながら繁栄すればするほど敵の影が現れるのが世の常。いくらスズメバチが強くて凶暴だったとしても敵が全くいないワケではございません。
特に社会性昆虫であるアリやハチの巣は敵たちからすればタンパク質の塊のようなもの。ちまちま一匹ずつ虫を捕まえることに比べれば捕食するメリットも大きいと言えるのではないでしょうか?
天敵たちは「ナチュラルボーンバーサーカー」を獲物とするべくさまざまな方法でスズメバチを倒します。
強者も辛いよ、スズメバチの天敵について見ていきましょう。
・スズメバチの天敵を探せー。「節足動物部門」!! クモ、トンボ、アブ!
※「昆虫部門」ではなく「節足動物部門」としたのはクモは正確には昆虫ではないからです。ややこしいね。
さあ、昆虫界でもかなりの強さを誇り、最強候補として名高いスズメバチですが、
スズメバチを倒せる虫は意外といるのです。
有名なのは「オニヤンマ」。
トンボは昆虫界でも屈指の飛行能力を持ち、空中でのタイマンならば圧倒的なスピードでスズメバチを翻弄、強力なアゴでムシャムシャと食べてしまいます。
さらに「カマキリ」。
昆虫界のトータル・ファイター。2本のカマによる押さえつけが強力で、その凶暴性もピカイチ。寝技に持ち込んだらかなりの強さを発揮します。総合力の高さが魅力。
シオヤアブは非常にクレバーなハンター。アブといえば口吻を動物に突き刺して血を吸うイメージ(ウシアブとか)ですが、シオヤアブは虫をとっ捕まえて体液を吸います。
広い空間の枝に留まって獲物を待ち伏せし、優れた視力で獲物を補足・位置や速度などを計算して空中で一気に襲いかかります。そして驚く間もなく口吻を突き刺して体液をジュルジュル吸う……。暗殺者のような狩りでスズメバチすら空中で捕らえてしまいます。
そしてクモ。飛ぶ昆虫全般にとって無視できない捕食者です。
しかしクモの巣はスズメバチに対してそこまで強力な武器とはなり得ません。スズメバチほどの大きさの昆虫が全速力で突っ込んだ場合、クモの巣はほとんど千切られてしまうことでしょう。万一捕らえたとしてもハチが反撃できないほど弱るには相応の時間がかかりますし、正直クモにとっていい獲物であるとは言えないでしょう。
……と、スズメバチにとって捕食者たりえる虫たちを紹介してきましたが、なんとなく勘付きましたよね。
スズメバチに対して一方的な捕食者がいないのです。
「いい勝負しそう」であって、「圧勝できる天敵」と言えるヤツがいないんですよ。
オニヤンマもカマキリもその場の状況次第で負ける可能性がありますし、シオヤアブも奇襲攻撃に失敗して取っ組み合いになればスズメバチの獰猛さには敵いません。クモはちょくちょくスズメバチに食べられていますしね。
そして勝って捕食できたとしても「タイマン前提」です。スズメバチは社会性昆虫。巣には何百匹というスズメバチがブンブン待ち構えているわけですから、もしスズメバチが仲間を呼んだ場合にはどんな虫でもズタズタにされてしまうことでしょう。
虫の世界でスズメバチに「圧勝」できるものは思いつきませんね~。集団戦闘ならグンタイアリでも持ち出せばほぼ100パーセント勝利はできると思うのですが、グンタイアリ側の被害もゼロじゃないからな~。圧勝とは言い難いですね。
スズメバチに圧勝できる天敵はどこにいるのか? 次は哺乳類部門を見てみましょう。
・スズメバチの天敵「哺乳類部門」!! クマ、人間……特に長野県民?
虫の界隈では天敵らしい天敵がいなかったスズメバチ。それでは哺乳類の世界ではどうなんでしょうか?
脊椎動物である哺乳類。最小クラスのネズミですらスズメバチよりも大きな体格を持っています。スズメバチがいくら強いといっても所詮は昆虫。脊椎動物さまには敵わんのですよ!!
自然界でスズメバチがどうしようもないレベルの哺乳類、
それがクマです。
雑食性のクマ、2本にはツキノワグマとヒグマが生息していますが、そのどちらもスズメバチの巣を襲って食べることがあります。
分厚い皮膚、硬い体毛、巣をボンガボンガ破壊するツメ。スズメバチの長所である機動性も毒針も、皮膚の薄い顔以外にはほとんど効きません。
稀にクマもスズメバチの激しい攻撃に退散することがありますが、それも殺されるわけではなく単に痛いから逃げていくだけです。お腹が空いて食べるものがハチの巣しかなければ多少痛かろうが破壊してバリバリ食べます。
ハチの子、さなぎ、成虫どころか巣そのものでさえも栄養であるハチの巣はクマにとってこの上ないごちそう。実際のところ、クマはハチミツよりもハチの子が好きなのでスズメバチの巣はさぞかし食いでがあることでしょう。
クマは文句なしの「スズメバチの天敵」ですね!!
やったぜ!!
問題は「よーしスズメバチ駆除するからクマ呼ぼう!!」とはならないところですね。人里に降りてこられても困る。スズメバチより大事になるわ。
そしてスズメバチにとってある意味最大の天敵と言えるのが「人間」です。
皆さんご存知でしょうが「ハチの子」は珍味として好む人が多い食材です。また成虫・さなぎも美味しく食べることができ、2本の昆虫食としてはかなりメジャーな位置をキープしています。
佃煮はもちろん、炒ってパリパリにしたスナック的なものや素揚げなんかも作られています。エビかな? 巣を天ぷらにして食べることもあるようで、美味しいのかな?
もちろん嗜好品としてハチを好む側面もありますが、やはりスズメバチは人間にとって害虫の側面が強いです。特に軒下などに巨大な巣を作り、(意図せずとも)近づくと威嚇してブスブス刺してくる居直り強盗のような「キイロスズメバチ」はおそらく日本でもっとも駆除されているスズメバチではないでしょうか。
かつて肉食文化が忌避されていて魚食文化が強く根付いていた日本人。しかし内陸の地域は魚介類を日常的に食べることが出来ず、タンパク源として虫が好まれる土壌がありました。
食材として一定量が手に入るイナゴやスズメバチ(とくにクロスズメバチ)、ザザムシが食品として信州、つまり長野県で有名ですね。
長野県ではクロスズメバチを「ジバチ(地蜂)」と喚び、地蜂追いというクロスズメバチの巣を探して一網打尽にする方法が現代でも使われていたりします。さすが日本の昆虫食王国長野県。
……というわけで哺乳類部門からはクマと人間が「スズメバチの天敵」と呼べるでしょうね。スズメバチは黒い色に反応して襲いかかってくると言いますが、クマと日本人相手に苦い経験があるからこそ黒を嫌うのかもしれません。
・スズメバチの天敵、大本命「鳥類部門」。カラスとかハチを食べないの? そしてスズメバチ真の天敵「ハチクマ」!!
さあ、ついにやってきました虫の天敵最有力候補
「鳥類」です。
昆虫の大半は鳥類を天敵としています。世界最大級の虫が極稀に最小クライスの鳥を捕食することがあるくらいで、ほとんどは鳥が虫を食べちゃいますよね。
意外なところでは「ニワトリ」がいます。
家禽のイメージが強いニワトリですが、野生の状態では昆虫を捕食しまくっている剛の者。野生に近い状態で飼育しているニワトリでもスズメバチは捕食できるでしょう。
ニワトリはハチの巣を攻撃することはありませんが、近くをブンブン飛んで「どっか行けよオラー」と威嚇するスズメバチを捕らえて食べてしまいます。余裕余裕。さすがは鳥類の瞬発力。
カラスなんかは賢いのでハチを攻撃しそうですが、こちらもハチの巣はあまり攻撃せず、1匹で飛んできたハチを食べるくらいのもんです。
稀にハチの巣がカラスに攻撃されて一部がボロボロになっていることがあるそうですが、私は見たことはありませんねー。幼虫を食べるらしいですが、目撃例を聞かないので「天敵」と言えるかはビミョーですね。
そしてクマと並んで最大の天敵と言える鳥が「ハチクマ」。
かっこいいっすな。
聞き慣れない名前でしょうが、鳥類なので当然ハチでもクマでもありません。ハチを食べるクマタカ、略してハチクマ。
ハチクマはスズメバチを食い尽くすために生まれてきたかのようなスペックの鳥でして、枝についた巣のみならず地中の巣すらバッキバキに破壊して成虫を食べ、幼虫もさなぎも食べ、ヒナたちへ栄養満点のエサとして届けたりする……。凶悪なスズメバチをお惣菜感覚で食べてますね。
ハチクマは羽の下に硬い羽毛がみっしり生えており、スズメバチの毒針攻撃を物ともせずにムッシャムッシャ食べていきます。
さらにスゴいのは、ハチクマたちは協力してスズメバチの巣を狩るケースがあること。本来、群れることのない猛禽類は協力して狩りをすることはまずありませんが、ハチクマは巣を攻撃する際に他のハチクマが参戦してきても気にせず巣を攻撃します。獲物として大きいから多少持ってかれるくらい気にしないんですかね?
夏に産卵のために渡ってくるハチクマ。これからの季節に頑張ってスズメバチを食べまくって欲しいですね~。