磁石にくっつく生き物だって!? 深海生物「スケーリーフット(ウロコタマフネガイ)」。どこかで飼育とかされてませんか?

「金属」って何歳くらいで知りました?

私は幼稚園くらいでしたかね。冷蔵庫に磁石ペタペタして遊んでて、磁石から派生して金属にくっつくってことを知って……。

「鉄」に始まり「金」「銀」「銅」「アルミニウム」「鉛」「チタン」「ベリリウム」「ニッケル」「ジルコニウム」……。

宝石の組成に関わる金属元素も多いですから、そこから入ってマニア化する人もいらっしゃいますね。化学・電子工学が好きな人も金属にハマっていきますね。

あ、男の子は金属好きが多いですよね。

超合金とか(古いか?)合体ロボとかね。

そんな中にある男の子の永遠のロマンの1つ、それは「金属生物」

今、地球上でもっとも金属生物といえるのはこの生き物でしょう!

「スケーリーフット」!!(Google画像検索)

はい、見ての通りの巻き貝です。

「ただの巻き貝じゃん」と思うのはまだ早い、このスケーリーフットがスゴいのはこの、

殻から出てるモサモサした部分

これはいわゆる「足」なのですが、これ、です。

改めて言います。です。

ついでに言えば黒いスケーリーフットは殻にもが含まれていますから、

まさに金属と融合した生物!!

「金属と融合した生物」って明らかにバイオハ◯ード的なゲームに出てきそうじゃないですか!!

ロマン!!!!

さあ深海のスーパーアイドル、スケーリーフットについて見ていきましょう!!

・深海のキテレツ生物「スケーリーフット(ウロコタマフネガイ)」。磁石につく!? 金属を纏った不思議ボディ!

スケーリーフット。

「Scaly foot(鱗の生えた足)」という意味ですが、これは俗称。本名は別にあるんです。

日本では「ウロコタマフネガイ」。おそらく漢字だと「鱗玉舟貝」。

「玉」は「美しいもの」「完成されたもの」という意味もあるので、スケーリーフットがどれだけCoolな生き物なのか印象付けられますね。

ウロコタマフネガイ……スケーリーフットでいいか。

スケーリーフットは深海の底生生物です。まあ貝ですしね。

2001年にアメリカの研究チームが発見したこの貝は、インド洋の水深2000メートルで発見されました。

海底には熱水が吹き出す「熱水噴出孔」があり、この熱水に含まれる物質が鍾乳洞のように固まった「チムニー」と呼ばれる煙突状のモノがあります。

そこに生息しているのがスケーリーフットをはじめとした多彩な生き物たち。

チムニーから噴出している熱水はなんと最高で470℃にもなります(水圧やらなんやらで沸騰しないらしい)。どんな環境で生きてるんだ……。

ちなみに熱水から離れている場所の海水温は2℃。

ムラがすごいな。この中間はちょうどいいのか……?

そして、生息している熱水噴出孔こそが、スケーリーフットのキモなんですねー。

・磁石にくっつく! スケーリーフット(ウロコタマフネガイ)には「硫化鉄」「黄鉄鉱」が!

体長5センチ程度のスケーリーフット。

こんな小さな生物が、磁石を近づけるとカチカチくっつくんです。不思議ですよねえ。

スケーリーフットはどこから金属を摂取して、

体に吸収するんでしょうか?

答えは単純。熱水噴出孔です。

前述したとおり、熱水噴出孔から噴出した熱水、そこに含まれている様々な物質が冷えて固まったものが「チムニー」です。

熱水にはさまざまな化学物質が含まれていて、

その中には金属や硫化水素(猛毒ですね)が。

スケーリーフットはこれらを栄養として取り込んで殻や足に吸収しているのです。

しかし、こんな毒物をどうやって栄養にしているのでしょうか?

答えは「共生菌」の働きなのです。

硫化水素やメタンを分解してエネルギーにする細菌がいるのですが、

スケーリーフットを始めとした熱水噴出孔の周りの生き物たちは細菌を体内に住ませています。

スケーリーフットの体内には硫黄や鉄をエサとする細菌が住み着いていて、そこから栄養を受け取って生きているので「硫化鉄(硫黄と化合した鉄)」や「黄鉄鉱(これも鉄と硫黄からなる金属)」を体内に取り込むことができるのです。

太陽の光もなく、植物プランクトンもない海底の世界。

熱水噴出孔は、浅瀬でいえば「太陽」のような生命を育む存在なのかも知れません。

・スケーリーフットの値段ってどのくらい? 飼育はできないの? その理由って?

メチャメチャ珍しい生き物であるスケーリーフット、当然ながら「欲しい!」と好奇心を爆発させる方も少なくありません。

実際に買うとしたらお値段いくらくらいでしょうか?

当然、非常に珍しい研究対象であるため、どこかに売られているということもありません。そもそも、値段をつけることすらできないのかも知れません。

仮に値段をつけるとすれば、

「深海を探索できる潜水艦を作り、自分で採取する」金額と考えればいいかも知れません。何億円、いや何十億円かかるんじゃー。

参考までに、日本でもっとも海底研究を進めているJAMSTEC(海洋研究開発機構)の研究者

の方がTV出演された際に本物のスケーリーフットを使用したアクセサリーをお持

ちだったのですが、「オークションに出せば100~200万円はくだらない」

仰っていました。

需要ありそうですもんね~。お金持ちのマニアならもう1ケタ出しそう。

ちなみに、スケーリーフットは過去に

「生体が日本で飼育されたこと」があります。

2006年の調査で採集されたスケーリーフット。新江ノ島水族館に輸送され数日は飼育されましたが、やはりそこは謎の多い深海生物。死亡してしまいました。

直接の原因は不明ですが、

推測の1つとして「金属部分が錆びてしまったストレス」ではないかと。

そうです、スケーリーフットの殻や鱗は錆びるのです。鉄なので。

「鉄が錆びる」とは「鉄が酸化する」ということですが、深海には酸素が少ないので金属も錆びにくいのです。しかし地上は深海に比べれば酸素が多すぎるので錆びてしまいます。

スケーリーフットを本格的に飼育するならば、水槽の酸素濃度を低く保つことが条件の1つなのではないでしょうか。

少しでもスケーリーフットにお近づきになりたい方はぜひ新江ノ島水族館へ!!

本物の標本が展示されている日本でも数少ない場所ですよ!!

・最後に…鉄の鱗に覆われていないほうが硬い!? 白スケーリーフット。

いや~まだまだ書ききれない!! もっと書きたい!!

でもスケーリーフットの魅力は枚挙に暇がないので大変なんですよね~!!

鉄に覆われていない「白いスケーリーフット」とか、実は鉄に覆われていないほうが材料工学的に強度が上だと判明したとか、そういうサイエンスのナンセンスが詰まっているんですよねー。

まだまだ発見されて日が浅く、研究も進んでいないスケーリーフット。

まだまだ我々を驚かせてくれそうです。今後も要注目!!