「深海は神が失敗作を隠しておく場所」
と申します。
もちろんジョークですが。
深海生物たちがあまりにもクレイジーすぎる外見を持つために、深海生物ファンの間で囁かれるジョークです。
このジョークは妙に納得してしまうところがあります。しょせん我々は地上に住んでいる生物に過ぎません。深海のような遠く離れた環境のことには想像力が及びませんから。そりゃ驚きの生物も出てくるのです。
さて、そんな深海生物の「顔」といえばいったい誰でしょうか?
実はオスが4センチくらいしかないチョウチンアンコウ。
昔からファンタジックな扱いだったリュウグウノツカイ。
今はやっぱりダイオウグソクムシ?
スゴいメンツですね~。全員生きて展示されてたら水族館は大繁盛ですよ。顔面もスゴいですね~(失礼か?)。
しかし深海世界……というか深海世界の研究も日進月歩。どんどん新たな「偉大なる神の失敗作」が発見・記録され我々一般人でも楽しめるようになっています。
こいつが新たな「深海の顔」!!
ねー……。もうどこからツッコめばいいのかわからないくらい
ツッコミどころ満載フェイスですね。
とりあえずツッコむとすれば
「緑かよ!!」ですかね(さ◯ぁ~ず風)。
まま、じっくりツッコんでいきましょう。さあ、デメニギスはどんな生き物なんでしょう?
・深海魚界の大型新人、不思議な目の「デメニギス」。大きさ、生息地、基本情報。
さあ、神様がいたとすれば確実に酔っ払った勢いで作られたであろうデメニギス。
分類はニギス目デメニギス属。
デメニギス属には現在、デメニギスしか分類されておりません。当たり前か。こんな魚がゴロゴロいてたまるか。
体長は10~15センチくらい。思ったより小さいですね。手のひらサイズ?
太平洋の北側、ちょっと寒目の深海400~800メートル辺りに生息。
日本では東北以北の沖合に生息。たま~に捕獲されてるみたいです。でも水揚げされちゃったら黒っぽくてキタナイ……。
デメニギスが最初に発見されたのは「1939年」。
「全然新顔じゃね~じゃん!」
と思われるでしょうが、ちょっと事情があるんですよ。
正確にはデメニギスが歴史上に確認されたのが
1939年なんですが、この見た目であることが
確認されたのが2004年なんですよ。
ん? 分かりにくい?
デメニギスは深海魚なので、レアです。現代でもレアなんですが、当時はもっとレアです。
なぜならば1939年当時、現代のような高性能の潜水艦などはありません。と、いうか当時の潜水艦はほぼ軍用ではないでしょうか、時代的に。
つまり、当時発見されたデメニギス……は打ち上げられたり、網にかかったけれどズタボロになった死体だったのです。そりゃそうだ。
時は流れて2004年(65年後)。アメリカの研究所が生体の動画撮影に成功し、その映像が一般に公開されたのは2009年(70年後!!)。つまり、デメニギスがこんなに愉快な生き物だとわかったのはすっごく最近のことなんです。
と、いうかこんな姿が知られていたらもっと有名になってますよ。とっくに。チョウチンアンコウレベルに。
そんなこんなでデメニギスが知れ渡ったのは最近でして、昨今の深海ブームも手伝って新世代のスターとしてスターダムにのし上がってきたのです。
・目の位置がクレイジーな「デメニギス」。目が移動する!? 脳はどうなってんの?
さて、もっともイジらなくてはならないポイントをスルーしてきましたが、
デメニギス最大の特徴は「目」です。
デメニギスは、
透明な頭の中に目が入っているのです。
画像でいえば、緑色の部分が目です。
顔の先にある2つの穴は鼻。
アホな顔してますよこの子……。
真正面から見るとスケベ顔にも見えます。(深刻な風評被害)
ちなみに目の後ろ側に脳まで見えるほどスケスケです。
この透明な頭部、内部は液体で満たされています。そこに据え付けられるように目が付いているんですね。
この目は「管状眼」と呼ばれるもので、字の通り「管の形をしている目」なんです。
この「管状眼」はいわゆる望遠鏡のような役割を果たし、
光の少ない深海で僅かな光を増幅して受けられるようになっているのです。
この「管状眼」は深海魚にたまに見られる特徴で、「ボウエンギョ」などもなかなかクレイジーな見た目をしています。
この「管状眼」、どうやらデメニギスの生活に深く関わっているようなのです。
・デメニギスの謎多き生態。なにを食べ、なにをして生きている?
デメニギスの胃の中からはクラゲの破片が発見されました。
クラゲを食べているようですが、あんな顔でどうやって食べているんでしょうね?
実はデメニギス、頭の中で目を移動させるのです。
お魚が泳いでいる姿をイメージしてください。
目は前を向いていますよね?
しかし、デメニギスは透明な頭の中で眼球を上に向けることで、
体を動かすことなく頭上を見ることができるのです!!
デメニギスは深海から上を見ることで、
頭上を通るクラゲなどの影を感知し、
獲物を見つけると目を前向きにして食べに行く。
という生態ではないかと考えられています。
まだまだわからないことが多いデメニギスですが、
近年の目覚ましい技術の進歩によりもっともっと面白い情報が出てくるのが待ち遠しいですね。
・余談
デメニギス。
かっこいい名前ですよね。
しかし日本語では「出目似鱚」。
まず鱚に似ている「ニギス」がおり、
その仲間で出目っぽい見た目なので「出目ニギス」。
でも、目は頭の中なんですよ。
出目じゃないんですよ。
すいませんこの矛盾だけ伝えておきたかったんです。
本当に余談でした。失礼。
最後に参考写真。
↓キスさん
↓ニギスさん