Bon Voyage!
船旅ってなかなか無いですよね。
いいですよね船旅……。鈍行列車と並んでTHE・旅情っていう雰囲気があって……。船酔いさえなければ……。
最近は橋やらトンネルやらで車や新幹線で日本中に行けますし、遠くなら飛行機が多いんじゃないでしょうか? マイル貯まる~。
そんなわけで(?)
今回は海に浮かんで帆に風受け旅をする生き物を紹介します。
うおー、キレイな色合い! 透明感ある姿はビニール玩具っぽい!
藍と紫のコントラストはガラス細工のようじゃありませんか!
こんなのがプカプカ浮いて旅をしているのです。傍から見たら「キレイめのゴミか?」と思っちゃいそうですけど、とっても危険。
カツオノエボシは猛毒です。
「キレイなバラにはトゲがある」じゃないですけど、プカプカ浮いているだけのカツオノエボシにとっては毒が身を護る手段なんです。美麗な見た目にごまかされたらアブないですよ~?
美しいけど恐ろしい、「カツオノエボシ」について見ていきましょう。
・群体のくらし。猛毒生物カツオノエボシの生態とは?
風と波に導かれるままに海を漂うカツオノエボシ……。
浮袋は10センチ、そこから海中に伸びる触手は50センチにもなるそこそこ目立つサイズの刺胞生物です。
太平洋、大西洋、インド洋と世界中の海に生息しており、日本でも太平洋沿岸に現れます。
触手に毒があり、なにか刺激を受けると毒の入った刺胞を打ち込んで、動かなくなった小魚などを食べます。
彼らは英語圏では「Portuguese Man O’ War」と呼ばれています。意味は「ポルトガルの軍艦」。この見た目(Google画像検索)が昔の軍艦が帆を上げた姿に似ていることから名付けられました。
ちなみに和名「カツオノエボシ」は、カツオの時期にやってくる烏帽子に似ていることから。英名も和名もオシャレですね。
軍艦を名前に冠するカツオノエボシ、
実は名前に違わず「一糸乱れぬチームワーク」を持っています。
カツオノエボシは「群体生物」です。
群体生物は、無性生殖で増えたたくさんの個体が一つのコロニーとなって活動している生物。生物が必要とする多種多様な役割を分担して生きています。
たとえば特徴的な浮袋の部分は、浮く以外の能力を持っていません。食べることもできず、泳ぐこともできない。しかしこれがカツオノエボシの個体なのです。他にも消化や無性生殖を行う「ポリプ」になるもの、獲物を捕らえる職種になるもの、毒を獲物や外敵に打ち込む「刺胞嚢」になるものなど様々。いろいろなスペシャリストたちが集まって「軍艦」のように生きているのです。
・猛毒! カツオノエボシに刺されたらどうしたら? 傷の処置について
カツオノエボシは自ら遊泳する能力が非常に低いので、風向き次第で人間の生活圏に近づいてしまうことがあります。半透明のボディから、近くに来ても気づくことができずに触手にさわってしまい、刺されるという事故が起きがちです。
また、カツオノエボシの厄介なところは浜に打ち上げられてカッピカピに乾燥した姿でも毒刺胞は残っているということ。水分を取り戻すと刺激に反応し、刺胞を打ち込んできます。
子供にも安易に手が届く範囲にあんなキレイなオモチャっぽいものが転がっていたら触ってしまうかも知れません。いざというときのために、カツオノエボシに刺された場合の処置法を。
もちろん刺されないのが一番なんですけどね。
クラゲをはじめとした刺胞動物に刺されたときの処置法には根拠のない民間療法も多く、また刺された生き物の種類によって対処法も異なっているので
「なにに刺されたか把握すること」が大切です。
カツオノエボシは刺されると非常に強烈な激痛が走ります。近くに特徴的な浮袋があれば一発でわかりますよね。そうでなければ他のクラゲの可能性もありますので、以下の処置は逆効果になる可能性があります。
※間違いなくカツオノエボシに刺された! という場合。
まずは刺された部分に触手が付いていないか確認。痛みの強さにパニックになると毒以前に溺れてしまうので心を強く持ちましょう。
もし触手があったなら海水の中でそっと取り除き、ヘタにいじらずに近くの医療機関に行きましょう。触手を取り除く際には素手で行わないのがベターです。タオルなどを使って、患部をこすりすぎないようにしましょう。
もちろん、海水浴や磯遊びの際は事前にクラゲなどが出ていないか情報をチェックすることをオススメします。君子危うきに近寄らず、っていいますからね。
・猛毒のカツオノエボシを食べるウミウシ……。日本の水族館で見れるところはある?
さて、さんざんカツオノエボシの危険性を訴えてきましたが、自然界とは広いものです。毒蛇を食べる鳥がいるように、毒があるだけではどうしようもない敵が存在するのです。
カツオノエボシの天敵、
それが「アオミノウミウシ」(Google画像検索)です。
以前、アオミノウミウシとカツオノエボシの関係について触れたのですが、(リンク)
2~3センチくらいしかない小さなウミウシながら、カツオノエボシを利用し尽くすために生まれたんじゃないのかと聞きたくなるようなスペックには脱帽です。毒が効かないどころか刺胞を盗んで自分が利用する、むしゃむしゃ食べる、タクシー代わりにくっついて移動する……。
どっちも見た目はキレイなのがなんだか皮肉ですね。
さて、若干哀れになったカツオノエボシですが、
日本の水族館に飼育されているんですよ~!
海で見るよりずっと安全!(当たり前か)
飼育されているのは「新江ノ島水族館」。神
奈川県にある由緒正しき水族館です。
いや~このブログでも何度も紹介させて頂いて……ありがたい限りです。
ちなみにですが、アオミノウミウシの展示は発見できませんでした~。せっかくなら両方が展示されているのも見てみたいですが、カツオノエボシが食べられちゃいますからね。しょうがないんでしょうね。