「生きた化石」は案外多いです。
代表的なものは「シーラカンス」。
古生代からその姿を変えずに生きている魚ですね。
その他にも「オウムガイ」や「カブトガニ」、
「ゴキブリ」や「ムカシトカゲ」、
「ヌタウナギ」「ペリカン」なんてのも……。
様々な環境で太古の姿を残している「生きた化石」。特に深海や孤島には環境の変化の少なさや大型の捕食者が入りづらいことから種が保存されていることが多いです。
件のシーラカンスも深海に住んでいますが、シーラカンスを「表」とするなら「裏」があります。
それが「ラブカ」です。
近年ではTV番組「ザ!鉄腕!DASH!!」で登場したり、静岡は沼津にある「沼津港深海水族館」で盛んに展示が行われているので名前は知られてきましたが、いまだマニア向けという評判は覆せていないのが事実。
そこで今回は属性もりもりの深海ザメ、
ラブカを見ていきましょう。
・深海魚の中でも変わりサメ「ラブカ」。なんだか怖い300本の歯は一体……?
ラブカは「軟骨魚綱カグラザメ目ラブカ科ラブカ属」。
この「軟骨魚綱」とは平たくいえば「サメ・エイ」の仲間。ここから亜網・上目・目……と細かく分類されています。
ちなみに、代表的なサメであるホオジロザメは「ネズミザメ目」。
世界最大の魚類ジンベエザメは「テンジクザメ目」。
ハンマーヘッドシャークとして有名なシュモクザメは「メジロザメ目」。
サメは多様な生き物ですが、こんなにも違うんですねえ。もっとまとまってるイメージがありました。
ラブカはなんと恐竜やシーラカンスよりも昔からそのままの姿を保っているスーパー古代魚
その歴史はなんと4億年とも言われています。す、すげえ。
ただし4億年前の地層から発見されたのは「ラブカ似のサメ」。
実際のラブカの化石は8000万年前~5000万年前くらい。
それでもじゅうぶんすげえ。
その姿はとても異様。
最大で2メートルほどに成長するボディはまるでウナギのような筒状をしています。
6対のエラは妙にヒラヒラで、虚ろな目玉……。
そしてなにより恐ろしいのは25列、300本にも及ぶ数の歯です!
内側に反った、何叉にも分かれたトゲトゲの歯がズラリと並ぶ様相はもはやホラー。
他の魚を獲る中に混獲されて漁船に上がったときにはなぜか歯が真っ赤に染まるのもコワイ。深海との水圧差でそうなるのか、深海魚は陸に上ってきたときにホラー化する傾向があります。
いや深海にいるときもそれなりにコワイんですけど。なんかビュルル~っと顔面に食いついて来そうで。
このトゲトゲの歯は、
ラブカの食事が深く関わっています。
ラブカがよく食べるのはイカやタコなどの頭足類。あのヌルヌルしたヤツらを逃がさないように、トゲトゲが「返し」になっているんですね~。
しかしながら、深海性のサメ、ということでまだまだ研究が進んでいません。
極稀に混獲されたラブカの生体が水族館など研究機関に引き取られますが、飼育方法も確立されていないことから飼育下で長生きした例はありません。
次項ではラブカが見れるかもしれない! 水族館情報や味について書きますよー!!
・ラブカだけでなく深海サメや奇妙キテレツ生物飼育にチャレンジし続ける「沼津港深海水族館」。
ラブカは希少ながら世界中の広い範囲に分布しているのですが、
なぜか日本で上がる機会が多いらしいです。
見た目がコワイから他の地域だと捨てられてるだけかもしれないですけど(偏見)。
そして日本は実は世界最大の水族館大国!
「国際水族館フォーラム」で確認された日本の水族館は70館!
世界一の館数を誇っています。島国だからですかね?
そんな中、今回取り上げるのは「沼津港深海水族館」。
先述しましたが、静岡は沼津にある水族館です。
沼津の目の前にあるのは「駿河湾」。
駿河湾は「日本一深い海」!
水深2500メートルにも及ぶ深さは、多くの深海生物を育んでいます。
タカアシガニ、アブラボウズ、ヌタウナギ……。
当然「ラブカ」も駿河湾で見られる深海魚です。
沼津港深海水族館では、
過去に何度もラブカを展示しています。
最近では2012年、2016年、2017年に生体飼育され、2016年12月に飼育された個体は一週間生き延びて飼育期間記録を更新したそうです。7日間しか展示されなかったなんて(しかもそれが最長)まだまだレアな生き物ですね……。
水族館の飼育員や漁業関係者の方々が手を尽くしているのですが展示まで至る個体は少なく、2017年末には死亡してしまったラブカを触れるイベントが実施されたりしています。深海生物クイズ優勝者にはラブカの歯が贈られたそうです。なんじゃそら。マニアは垂涎でしょうけども。
ちなみに、死亡したラブカを「食べてみた」という情報もありました。なにやってんだ水族館。羨ましい。
刺し身は「サメとは思えないほどクセがなく、特徴がない」
卵を茹でて食べたところ「顔をしかめる味」だったようです。
……。
まあ今まで食べられてなかったわけですしね……。コンスタントに獲れるようになったら美味しい調理法も研究されるんでしょうか。
仮に沼津港深海水族館でラブカ展示のお知らせがあったらダッシュで行きましょう! レアですよ! 死んじゃっても触れるかも!
※剥製のラブカなら、いつでも沼津港深海水族館で見られますよ〜
・サメのくせに「シン・ゴジラのモデル」に!? ラブカも意外とかわいいよ?
2016年ナンバーワンヒット映画といえばなんでしょう?
……。(シンキングタイム)
そうですね。「君の名は」ですね。
はーいゴメンなさーい「シン・ゴジラ」でーす。
※ここから先は映画「シン・ゴジラ」のネタバレを含みます。もはやネタバレもなにもないとは思いますがこれから観るのを楽しみにされている方はご注意ください。
「シン・ゴジラ」に登場するゴジラはいくつかの形態に分かれています。周囲の環境に迅速に適応して体の構造を変化させるのです。
第五形態まであるのですが、その第二形態が通称「蒲田くん」。蒲田に現れたから蒲田くんという愛称(?)が生まれました。
海から上がってきたばかりなので海の生物の特徴が残っています。アホっぽい顔(失礼)、首にビラビラのエラ。ちなみにエラからは放射性物質たっぷりの液体がダラダラ。怖えー。
この「シン・ゴジラ第二形態(蒲田くん)」のモデルになったのがラブカなんですね~。
深海から上がってきた設定ですから、ゴジラがラブカ的な姿をしていても違和感はないですが、
カメラ目線で蒲田をダッシュする蒲田くんは正直トラウマものでした。よく見るとかわいいですけどね。よく見ればね。
「シン・ゴジラ」が大ヒットしている裏では深海生物ファンが
「ククク……! ラブカが全日本を震撼させているぞ……!」
とほくそ笑んでいたのです。
さて、まだまだ研究途中のラブカ。今後明らかになる情報もあるでしょう。その中にラブカをもっと魅力的に思わせてくれるものもあるでしょうきっと。
いつか全国の水族館で定番になってくれたらいいな~と思います。
ガンバレ、沼津港深海水族館の皆さん!