カタツムリは「陸貝」の仲間です。そうです。貝なのです。
「有肺類」といって、陸上で呼吸ができるようになった貝の仲間なんですね。
言われてみれば貝っぽくないですか? 殻は巻き貝みたいですし、あのヌメヌメしたボディも生きている貝の中身やウミウシ(これも貝の仲間)みたいじゃないですか?
ちなみにナメクジも陸貝の仲間です。殻が退化してなくなっているだけなので、分類上は貝なんですね。
さて、実は貝には寄生虫がつきものです。人体に影響がないものも多いのですが、中には非常に厄介なものもあります。カタツムリという身近な生物にも寄生している可能性があります!
「いつの間にか寄生虫の被害を受けていた」とならないために、特に有名な2種類をピックアップして紹介します!
・カタツムリにいる寄生虫ってどんなの?
カタツムリにいる寄生虫でもっとも有名なものは、
「広東住血線虫」です。
これはニュースなどになることもある「人間が死ぬ可能性のある」寄生虫です。
2000年に沖縄で1件の死亡例があり、寄生された症状による入院の例もあります。主な症状を見てみましょう。
症状の例
- 発熱
- 激しい頭痛
- 顔面麻痺
- 手足の麻痺
とても重大な症状の数々。こういった症状に襲われないためにも最も基本的な対処法を学んでおきましょう。
最大の対処法は「洗うこと」です。
・カタツムリやナメクジに触ったあとは必ず手を洗うこと!
・野菜を生で食べる時は流水でよく洗うこと!
この2つの対処法で広東住血線虫の寄生を予防することが出来ます。
広東住血線虫は本来、「カタツムリやナメクジ」と「ネズミ」に寄生している生き物です。
幼虫に寄生されたカタツムリやナメクジをネズミが食べ、ネズミの中で成虫となって卵を産みます。生まれた幼虫はネズミのフンに紛れて排出され、幼虫はまたカタツムリなどに食べられて……。というサイクルを繰り返します。
なので本来は人間とあまり関わり合いがなさそうですが、万が一の可能性をなくすためにも、宿主の可能性があるカタツムリなどに触ったら必ず手を洗いましょう。
生野菜には出荷前などナメクジがついている可能性があるので、必ず一度水洗いすることをオススメします。
また……、すごく言いづらいことなのですが。
カタツムリやナメクジを食べる時は必ずよく火を通しましょう。
「食べるかそんなもん!」と思った人はそれでいいのですが、やむを得ない事情や個人の趣味で食べる人を止めることはできませんので、「せめてよく火を通して広東住血線虫を殺してから食べて!」と伝えたいです。
生食は非常に危険です。ダイレクトに寄生されてしまいます。
漫画家、水木しげる先生の作品「ゲゲゲの鬼太郎」には鬼太郎やねずみ男がナメクジを食べるシーンがありましたが、決して真似しないでください。彼らは妖怪だから食べられるのです。
広東住血線虫についてはこのあたりで。次項では別の意味で恐ろしい寄生虫をご紹介しましょう!
・身の毛もよだつ寄生虫……カタツムリの目が!?
もう1つの寄生虫は……、
…………。
一応、警告しておきます。ショッキングなものが苦手な人はこの記事をこれ以上読まないでください。
…………。
忠告しましたからね?
その症状のおぞましさ
その寄生虫は「ロイコクロリディウム」。
エキセントリックな生態で非常に有名になった寄生虫です。
寄生サイクルは、カタツムリ→鳥→カタツムリ……と非常に単純なサイクルを繰り返します。鳥に寄生したロイコクロリディウムは、鳥の体内で卵を産み、その卵はフンと一緒に排出されます。カタツムリが鳥のフンのなかに紛れ込んだ卵を食べることで体内に寄生を始めます。
カタツムリの体内で孵化した幼虫は、カタツムリが食べたエサを拝借して成長します。そして……。
カタツムリの体内をグリグリと移動しはじめます。
消化器で生まれた幼虫は、カタツムリの触覚部分に移動します。角だとか目玉だとか言われる部分ですね。体内を掘り進むように移動されるカタツムリはどんな感覚が……。
ロイコクロリディウムはカタツムリの触覚にたどり着くと、その触覚に潜り込み、カタツムリの目を緑色のイモムシのような形にしてしまいます。
聞くだけでもおぞましい生態ですね……。
しかし、触覚をイモムシ状にしてしまうのは、ロイコクロリディウムの生態の一端にすぎません。さらなる恐怖の習性を次項で紹介しましょう……。
・恐怖! カタツムリを鳥に食べさせる寄生虫!?
さて、ここで他の寄生虫の話を挟みたいと思います。
有名な寄生虫に「アニサキス」というものがいます。サバやタラに寄生していることが多いので一般にも知られていますが、アニサキスの最初の寄生主は「オキアミ」などのプランクトンです。そしてそのオキアミをサバなどが食べ、さらに最終的にクジラなどの哺乳類に食べられて寄生します。
生まれたばかりの小さな寄生虫は、小さな生き物に食べられ、もうちょっと大きな生き物に食べられ……、と、寄生主を次々に取り替えながら最終宿主へと向かっていくことが多いんですね。
しかし、このロイコクロリディウムの珍しい習性は、
「宿主を操って最終宿主へたどりつこうとすること」です。
カタツムリの目をイモムシ状にしたロイコクロリディウムは、カタツムリという生き物の習性すら操作します。
本来、カタツムリは外敵に食べられないために夜に行動し、日陰を好みます。しかし、ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリは、昼間に、それも葉っぱの上など目立つところに行ってしまうようになります。イモムシのようになった目玉をグネグネとくねらせながら……。
そんな目立つ場所にイモムシっぽいものがあるので、当然、鳥からすればごちそうに見えるので、あっという間に食べられてしまいます。哀れなカタツムリ……。
そうして無事(?)鳥の体内に侵入したロイコクロリディウムは、鳥の中で成虫になって産卵し、鳥のフンの中にはまたロイコクロリディウムの卵が……、とサイクルを繋いでいきます。
カタツムリからすれば恐ろしすぎる生き物ですね……。いつの間にか体を乗っ取られて鳥に食べられるように仕向けてくるなんて……。
ちなみに、日本でも北海道などで発見されているそうですが、ロイコクロリディウムが人間に寄生するという話はありません。人間に直接的な害がある生き物ではないのですが、そのショッキングすぎる生態と寄生されたカタツムリの見た目から、そういったおぞましい想像をしてしまうのかもしれませんね……。