生き物には「異名」がつきものです。
「百獣の王」ライオン。
「生きた化石」シーラカンス。
「森の賢者」オランウータン。
端的にカッコよく動物のことを表現していて、
耳に残るいいフレーズですよね。
今回ご紹介するのは「蒼い天使」
「ブルードラゴン」とも呼ばれる、美しい生き物。
「アオミノウミウシ」です。
その外見はまさにファンタジー。
ファイナルファンタジーで召喚されててもおかしくない美麗なビジュアルが特徴です。美しい生き物が多い海ですが、その中でも一種「完成された美」にも思えます。この美しさはスキがない。
こんなファンタジックな見た目のアオミノウミウシ、ビジュアルは知っていてもその生態まで詳しく知ってる人は少ないのでは?
それでは「蒼い天使」、アオミノウミウシについて見ていきましょう。
・「アオミノウミウシ」の基本情報と生息地。日本では沖縄にも生息!
さて、美人さんのアオミノウミウシですが、名前のとおり「ウミウシ」の仲間です。
体長2~4センチ。思ったより小さい。手のひらサイズどころか指先サイズ。色も相まって宝石サイズですね。
暖かい外洋に生息していて海岸付近まで来ることはあまりないですが、ヨーロッパの沿岸、オーストラリアの東側の海など、日本では南西諸島、小笠原諸島で見ることができます。沖のほうでね。
分類は「裸鰓目アオミノウミウシ科アオミノウミウシ属」。
この「裸鰓目」というのがウミウシってことです。
ホントはもっと複雑な分類がされているんですが、アオミノウミウシとは関係ないので割愛。
そしてウミウシは貝の仲間。ウミウシ。
英語ではsea slug(海ナメクジ)。
ナメクジは、カタツムリが「殻ない方が良くない?」と殻を退化させた仲間なのに対して、
ウミウシも、貝が「殻なくて良くね?」と貝殻を退化させた仲間です。
ウミウシのイメージって、もっとノソノソ、ずんぐりしたカンジですよね。しかしアオミノウミウシは大きなヒレとスマートな体型。
このヒレを広げた形がトカゲっぽいことから、「sea lizard(海トカゲ)」の異名も。異名多いな……。
多くのウミウシは砂地や岩場にいるのでノソノソ歩いていますが、
アオミノウミウシは水面近くを遊泳するのでこんな体型になっています。
それも消化管に空気を入れてまで浮きます。
ちなみに、浮いているのはお腹のほう。なので人間なら背泳ぎ状態です。
そこまでして浮くか?
せめて背中が上になるように進化できなかったんか、なんなんだキミは。
さ、そこまでしてアオミノウミウシが浮くにはワケが。
それは次項で紹介するごはんの為なんですねー。
・猛毒のクラゲもどき「カツオノエボシ」……の天敵アオミノウミウシ。とことん利用してやるぜ。
「カツオノエボシ」という生き物がいます。
別名「電気クラゲ(実はクラゲではないのですが、見た目がクラゲっぽいことから)」とも言われる、有毒の刺胞を持つ生き物です。刺胞に刺されると電気が走ったように痛いとのこと。
カツオノエボシは海にプカプカ浮いているのですが、風に煽られて海辺に来たら大変です。青っぽい体色で人間には見つけづらく、気づかないままビリビリ~っと刺されてしまいます。
これがとても危険で、何度も刺されるとアナフィラキシーで死亡する恐れすらあります。
海岸に打ち寄せられているものも危険で、死んでいても刺胞は刺さるので、決して素手で触らないように気をつけないといけません。
さて、そんなカツオノエボシですが。
アオミノウミウシはムシャムシャ食べます。
そう、アオミノウミウシはプカプカ浮いてるカツオノエボシを食べるために浮いていたんです。
カツオノエボシはアオミノウミウシの何倍ものサイズなのですが、アオミノウミウシはお構いなしにムシャムシャ食べます。背泳ぎ状態で。
カツオノエボシもただで食べられるわけにはいきません。有毒の刺胞を打ち込みます。
でもアオミノウミウシには効きません。
ムシャムシャ。
アオミノウミウシはこの毒を物ともせず、逆に刺胞を保存、
自分が襲われた時の武器にしてしまいます。これを「盗刺胞」と呼ぶらしいです。
もうカツオノエボシは食われるわ身ぐるみ剥がされるわ、いいトコなし。
しかしアオミノウミウシはまだまだカツオノエボシを利用します。
取り付いて移動手段にします。
もはや海賊クラスの傍若無人さ……!!
泳ぎ疲れたんですかね?
そりゃアオミノウミウシからすれば食べられるタクシーみたいなもんでしょうけども……。その間カツオノエボシは食われる恐怖に襲われているわけで……(カツオノエボシに恐怖を感じる能力があるかは議論の余地)。
とんだ天使がいたモンですね。
・アオミノウミウシ、飼育してみたい! どこで販売してる?
そんなわけで意外に小さかったりドSだったりしたアオミノウミウシ。
結論から先に言えば飼育するのは難しいです。
なぜならば、危険だからです。
先述のように毒の刺胞を持っていることがありますし、
なによりエサが……
カツオノエボシとか
カツオノカンムリ(カツオノエボシの親戚)とか
ギンカクラゲ(これも有毒)とか
毒がある上に安定供給が難しそうなモノばかり。
これらを安定して用意できる猛者であることが条件なので、気軽には飼えないですね~……。残念。
そして、上記の事情からまだアオミノウミウシの飼育方法が詳しく知られていないことも、飼育しづらさに拍車をかけています。
飼育方法が確立されていないということは、当然ショップなどの販売も盛んではありません。というか見たことありません。
「自分がアオミノウミウシの簡単な飼育方法を確立するぞ!」というよほどのアオミノウミウシマニアでない限り、止めておいたほうが賢明だと思いますよ?
よほどのマニアは南西諸島へGO!!
気をつけてくださいね!!
結果は教えてね!!