最強!? 全然死なない虫「クマムシ」。寿命はどのくらい? 弱点はなんだ?

「最強動物論争」というものがあります。

「やっぱりライオン」

「いやいやゾウ」

「サイ」「カバ」「ワニ」「サメ」「クジラ」

エトセトラエトセトラ……。

みなさんどの動物が一番強いと思います?

「デカい」「速い」「攻撃力」「凶暴性」……。

いろいろな要素が持ち出されて議論は終わりが見えません。

そこに、「防御力ならコイツが最強」

虫なのにエントリーされちゃってるのが今回のテーマ。

「クマムシ」です。

あったかいんだからぁ~♪

違います違います、そっちのクマムシじゃないですよー。(若い人は逆に知らないんじゃなかろうか……)

その筋では有名な生き物なんですが、ご存知でしょうか?

この「クマムシ」圧倒的な耐久力で知られています。

サイズ2ミリくらいなんですけど。

2ミリのくせに最強動物にエントリーされちゃうディフェンス生物「クマムシ」を見ていきましょう。

・ぜんっぜん死なない虫「クマムシ」。生息地はどこ? 大きさは微生物レベル?

クマムシは「緩歩動物門」という分類の生き物です。

いわゆる昆虫や甲殻類は「節足動物門」

もう「門」が違うんです。「類」どころじゃないんですよ。

人間は「脊索動物門」にいますが、この中には「哺乳類」「鳥類」「爬虫類」……と全然別の生き物が多くいます。「門」が同じでもこれだけ違う性質の生き物がいるんですから、「門」が違うクマムシと昆虫は別物なんですね~。

クマムシの「ムシ」は、かつて緩歩動物が節足動物に分類されていた名残りです。近年では遺伝子解析や定義の変化により、このように分類が変わってしまうことがあります。まあ、「ムシ」はもともと昆虫のみを指す言葉ではないですけどね。ミミズだって足ないけど広義では「ムシ」ですし。

さて、そんなクマムシですが、最大体長はなんと1.7ミリ。

ちっちゃ!!

クマムシが生息しているのは主に苔などの地衣類のスキマ。じめっとしたところが好きなんですね。

普段はそのへんの動植物の体液を吸っています。足は4対で、8本。クマのようにノソノソ動くので「クマムシ」と名付けられました。

緩歩動物の仲間は1000種以上も発見されていまして、まあ正直に申し上げましてそんなに人気がなかったのです。当然クマムシも。

そんな中、クマムシがコンビ名になるくらいメジャーになった特性が

「超常的なまでの耐久力」です。

クマムシが耐えられるものを以下に列記します。

  • 151℃の高温
  • ほぼ絶対零度
  • 真空
  • 75,000気圧
  • 紫外線・ガンマ線・X線など

ね? スゴイでしょ?

多分、途中から研究者の人も悪ノリしましたよね。研究のためとはいえ2ミリの虫によくこんなありとあらゆる耐久実験を……。

クマムシのクレイジーな耐久力、その秘密が「乾眠」です。

次項ではこの「乾眠」についてご説明しましょう。

・死ぬ虫? 死なない虫? 「クマムシ」の「乾眠」ってなに? 寿命はどのくらい?

「乾眠」。

「乾いて眠る」と書くように、体を乾燥させて休眠状態になることです。

先述したようにクマムシは苔などの湿っている場所に住んでいますが、周囲の環境が乾燥しだすと体を守るために「乾眠」します。

普段は体内の水分量80%ほどですが、ゆっくり時間をかけて体を乾燥させ、

乾眠状態になるとなんと水分量3%!! カラッカラに干せてしまいます!!

乾眠状態では呼吸・消化吸収などの代謝の一切もストップします。いわば自らミイラになるようなカンジですかね。生存に最低限必要な水分だけを残し、カラカラに乾きます。

この状態から、周囲が水分に満たされている状態になると活動を始めます。まずこの乾燥状態から復活する時点でスゴい。

乾眠状態のクマムシこそ先述の驚異的耐久力を見せます。

乾燥はもちろん、高温・低温・低気圧・高気圧・放射線……。あまりにも過酷な環境に対応します。

「クマムシタフ過ぎる」ということで、

2007年、宇宙に進出しました。

クマムシ、まさかの宇宙進出

ロシアの衛星まで運んで実験したところ、宇宙線に10日間さらしたにもかかわらず水を与えると復活し、さらに生殖能力すら維持していたのです。

しかし宇宙の強すぎる紫外線には弱かったようで、一部の個体しか復活しなかったようです。地球ではオゾン層が紫外線を吸収しているので、宇宙空間では桁違いの強さの紫外線がありますからね。

そんなスーパー生物、クマムシの寿命は!

3ヶ月くらいです。

3ヶ月……。短い。

しかし、近年の研究では約30年前に冷凍保存した苔から出てきたクマムシが復活して活動した、という記録もあります。代謝をストップさせているとはいえ、気が長過ぎませんか?

こちらの記録は、冷凍状態の保存だったために「凍眠状態」だったのではないかと言われています。実はクマムシ、「乾眠」だけでなく「凍眠」もするんです。

3ヶ月の生をまっとうするためにはあきらかにオーバーすぎませんか? このマンガみたいな耐久力。

・結局死ぬんかい。死んじゃう虫「クマムシ」の弱点。

さて、そんな耐久力を持つクマムシですが、弱点があります。

潰すと死にます。

……。

イヤ、ホントですよ。

実は物理的なダメージには、乾眠状態でも対応できないんです。

あとは、活動状態ではあっさり死にます。

乾眠はゆっくり準備しなければならないので、乾眠が完成するまえにお湯とか薬品をかけられたら一瞬でお陀仏です。ナム。

加えて、ひっくり返ると自力で元に戻れません。足が短いので。

なんらかの外的要因がなければそのまま死にます。だって動けないんですもん。餓死します。

……。

思ったより簡単に死ぬなぁクマムシ。

残念ながら最強動物論争のエントリーは取り消しになりそうです。

バトルフィールドが宇宙だったら……、チャンスあるかも?