シカみたいな角を持つ伝説の生物「シフゾウ(四不像)」。野性分布についてとか。

「竜」って知ってますか?

干支にもありますよね。あのヘビみたいな伝説の動物。

実は竜は9種類の動物の特徴を持っていると言われています。

「角はシカ、
頭はラクダ、
耳はウシ、
目はウサギ、
ウロコは鯉、
手はトラ、
ツメはタカ、
お腹はハマグリ、
首がヘビ」

いろいろ異論はあるでしょうが、こういった特徴を併せ持っているんです。

今回ご紹介します「シフゾウ」

「四不像」と書けばわかる方もいらっしゃるかもしれませんね。

ちなみに中国では「四不象」と書いて「スープーシャン」と読みます。

中国の小説『封神演義』にも四不象の名前で登場しています。主人公である姜子牙が乗る生き物ですが、現実のシフゾウとは違って空を飛んだりしています。絵を見たら明らかに伝説の麒麟に近いビジュアルです。今、これが原作である漫画のアニメやってますよね。

実はシフゾウ、4種類の動物の特徴を持っている、というのが命名の由来なんです。

「角はシカ、
蹄はウシ、
顔はウマ、
尾はロバ。
しかし4種類のどの動物とも違う。
この像、四つの動物にあら不(あらず)。」

像、四、不。

四不像。

シカ、ウシ、ウマ、ロバに似ているけどそのどれでもない。

そんな掴み所がない生物、「シフゾウ」について見ていきましょう。

・草食動物っぽい特徴がごった煮のシフゾウと、その学名の由来

そんな宙ぶらりんな説明になってしまうシフゾウ。結局どんな生き物なのか、全くピンと来てない方も多いかと思います。

基本情報を見てみましょう。

・シフゾウ

偶蹄目シカ科シフゾウ属

最大体長:約2メートル
最大体高:約120センチ
最大体重:約200キログラム

学名:Elaphurus davidianus

けっこう大きいですねー。ニホンジカが最大体重120キログラム程度と考えると明らかに一回りも二回りも体格がいい。

ちなみに学名なんですが、Elaphurus davidianus

大体こういう意味です。

Elaphurusは「シカ」。

davidianusは「デイヴィットの」。

Elaphurus davidianusで「デイヴィットのシカ」。

このデイヴィットというのはシフゾウを発見した神父の名前が由来です。

しょーもな!

・悲劇か喜劇か? 野性のシフゾウの分布。

シフゾウはギリギリを生きている生き物です。

現在、原産国である中国では一級保護野生動物に指定されています。

上でシフゾウを発見したデイヴィット神父について触れましたが、

1865年、デイヴィット神父がシフゾウを見つけたとき、既に野性のシフゾウは絶滅していたと考えられています。

なにぶん昔のことですし、広大な中国という土地のことですから詳細は明らかではありませんが、皇帝の狩場である南苑にいるもの以外は絶滅してしまったんです。狩られて食べられたのか、環境が合わなくなったのか。

この南苑にいたシフゾウを見つけたのが宣教師であったデイヴィット神父。シフゾウの毛皮をヨーロッパに送り、正式に「発見」します。まあ要するにヨーロッパ人が発見しただけですね。中国の人たちはとっくに知っていたわけですから。

この南苑にいたシフゾウも災害や内乱、狩猟によって全滅してしまいます。

シフゾウは絶滅……したかと思いきや。

所変わってイギリス貴族・ベッドフォード公爵の邸宅には、まだシフゾウが生きていました。当時はワシントン条約はありませんからね。中国から集められていたのです。

当時、この邸宅にいた18頭のみが世界に残さ

れたシフゾウだったのです。

1946年には邸宅で200頭にまで増えたシフゾウは、他の動物園にも分けられて徐々に数を増やしはじめます。後に一部の個体が故郷・南苑に放され、数十年ぶりにシフゾウは野性に帰ることができました。

めでたしめでたし……なんですが。

実はシフゾウは「オスがハーレムを作って繁殖する」動物なんです。

つまり、群れでなければ繁殖はできなかった。

ベッドフォード公爵が飼育していたシフゾウがもう少し少なければ、どれだけ手をつくしてもシフゾウは絶滅していたはずです。

現在では世界中の動物園にいるシフゾウですが、ほんの少しのボタンの掛け違いで図鑑だけの存在になっていたかもしれません。

耳が痛いハナシですねー……。

・日本でシフゾウが見れる動物園。多摩動物公園・安佐動物公園・熊本市動植物園!

さて、そんなシフゾウは日本の動物園にもいるんですよ!!

残念ながら花形スターとは言い難いですけどね。悲しいかなマイナーですし。見た目けっこうシカですし。

日本でシフゾウを飼育している動物園は全国に3箇所。案外多いのか少ないのか。

「多摩動物公園」

「広島市安佐動物公園」

「熊本市動植物園」

関東、中国地方、九州と思ったより広範囲に飼育されています。

中には

「この動物園は行ったことがあるけど、シフゾウなんて覚えてないなあ」

という方もいるのではないでしょうか?

現代でシフゾウが見られることは不思議な縁です。

この機会に、シフゾウの歴史に思いを馳せてみませんか?