ムスクの香り。
なんのこっちゃという方もいらっしゃるでしょうから説明しますね。
「ムスク」とは薬や香水の材料に使われている生物由来の素材です。なんかセレブリティーな香りですよ。
ホテル最上階のレストランで背中のパックリ開いたドレス着てる女性と食事してる紳士みたいな。(どんなだ)
この「ムスク」、別名を「麝香(ジャコウ)」というんですねー。
このジャコウですが、とある動物の分泌物から作られているんですねー。
さてどんな動物でしょー?
正解は「麝香鹿(ジャコウジカ)」でーす!
すみませんでした。陳謝いたします。
今回ご紹介します「ジャコウウシ」。実はこのジャコウジカが名前の由来になっているんですねー。
ジャコウジカから取れる「麝香(ジャコウ)」は非常に貴重な高級品だったので、それにあやかって強い良い香りがするものにジャコウと付けるんです。日本中に「◯◯銀座」があるようなものですね。
麝香に似た香りを分泌する「ジャコウネコ」「ジャコウネズミ」「ジャコウアゲハ」なんかがいますよ。「マスクメロン」も、もともとは「ムスクメロン」なんですよ。ホントのハナシ。
ただ、ジャコウウシも香りがする分泌液を出しますが、これは麝香とは全く別物です。強い匂いを出すのでジャコウの名前が付いたんですね。
「ジャコウウシ」、全身をモッフモフの毛皮で覆われ、ケンカに使えなさそうな横に伸びたツノが特徴のでっかい生き物です。
見た目ほぼバイソンです。
ジャコウウシとバイソンってどう違うんでしょう?
そもそもジャコウウシもバイソンもよく知らない……。
いっそのこと今回はジャコウウシとバイソンの特集にしましょう。そうしましょう。
・ジャコウウシとバイソンの違い。基本的なところから。
まず、ジャコウウシとバイソンの基本情報を見てみましょう。
・ジャコウウシ
ウシ目ヤギ亜科ジャコウウシ属
最大体長250センチ、体重260~600キログラムほど。
カナダ北部やグリーンランドに生息。アラスカやノルウェーにも。
・アメリカバイソン
ウシ目ウシ亜科バイソン属
最大体長380センチ、体重500~900キログラムほど。
アメリカ、カナダに生息。野生のものは絶滅している。
まず一言。
ジャコウウシってヤギの仲間なんかい!!
ヤギ亜科って……。ヒツジとかカモシカの仲間ですよ。
対してバイソンはウシ亜科。ウシやスイギュウなどが属しています。
つまり、遺伝子的にはかなり異なっているわけです。
わかりやすくネコで例えると。
・ネコ
ネコ目ネコ亜科ネコ科
・イヌ
ネコ目イヌ亜目イヌ科
亜科が異なるというのはここまで違うんですね~。
ネコとイヌってもはや全く別の生き物では……。
続いて外見について。
ジャコウウシは全身が長い毛で覆われ、U字のツノが左右にあります。このツノは一旦、下に伸びてから外側上方向に伸びていくのでU字です。
バイソンは頭や肩など上半身のみが長い毛で覆われていて、下半身は短い毛しか生えていません。ツノはU字というより( )みたいな形ですね。いわゆる猛牛のツノ、みたいな形ですね。
大きさもバイソンのほうが一回りも二回りも大きく、冷静に見ればあんまり似ていないかもしれません。真正面から見るともじゃもじゃで似てるんですけどね。
なぜ分類が全然違う生き物なのに似ているのか、というと「収斂進化」したからではないかと考えられています。
「収斂進化」とは。
平たく言えば「似たような境遇の生き物が似た進化をする」ことです。
有名なものでは「モグラとオケラ」。かたや哺乳類、かたや昆虫ですが、どちらも前足を土を掘りやすいように進化しています。
「ジャコウウシとバイソン」も、寒冷な地域に住んでいるために毛がモフモフしてるんですね。
まだまだ続くジャコウウシとバイソンの違いは次ページへ!