「外道」という言葉があります。
もともとは仏教用語で、「本流とは違う流れを行く人」くらいの意味。
しかし釣りに置いては「狙っていない獲物」を指します。
エサを取られたり、釣り糸を切られたり、
釣っても食べられなかったり。
極稀に本命よりアタリの外道もいますが、
そもそも狙い通りに釣れない時点でちょっと「イラッ」としてしまいますよね。
そんな外道たちの中でも「最外道」とも言えるのが、今回のテーマ。
「キタマクラ」です。
おそらく釣りが趣味でない方は聞いたこともないのではないでしょうか?
北枕……。
不吉な名前ですね。しかしこの名前も当然、意味あって名付けられたものです。
そんなマイナスイメージの強い生き物、「キタマクラ」について見ていきましょう。
・カワハギ釣りの外道魚「キタマクラ」。北枕の由来は?
キタマクラは、おちょぼ口のちょっとマヌケな顔の魚です。
日本の下半分、浅めの岩場やサンゴ礁に生息。
硬い歯で貝やカニなどの甲殻類を食べています。
浅瀬に住んでいるということは、磯釣りで引っかかりやすい、ということ。
キタマクラは波止場なんかでの釣りの外道として悪名高い存在です。
貝や甲殻類をバリバリ食べるような、強力な歯と顎で釣り糸を切ってしまうんです。
おちょぼ口なので釣り針を呑まずにエサだけを取っていってしまう通称「エサ取り」とされる種類です。
波止場でのカワハギ釣りに現れ、エサが放り込まれると敏感に察知し、本命が来るよりも先にエサを突っついて食べまくる嫌われ者……。
また顔がちょっとカワハギに似てるのがイヤらしいんですよね~。
釣れた! カワハギだ! と思ったらキタマクラでガッカリ。
糸を切るわエサは取るわ、
釣り人から見ればこんなにイヤな魚もなかなかいないでしょうね。
……。
ちなみに、全く同じ特徴を持つ外道がいます。
それが「フグ」です。
御存知の通り、フグといえば調理に免許が必要なほど危険な有毒生物です。
そんな危険な魚、あんまりお目にかかりたくないですよね~!!
ハイ。
そろそろ大体の方が読めたと思うんですが。
キタマクラは、フグの仲間なんです。
モロに有毒です。
超がつくほど危険です。
「キタマクラ」という名前は、
「毒によって死ぬ羽目になる(北枕になる)」
という凶悪すぎる意味なんですね……。
糸を切る。エサを取る。釣っても食べられない……。
これがキタマクラが「外道」とされる理由です。徹頭徹尾嬉しくないな……。
分類は「フグ目フグ亜目フグ科キタマクラ属」。
フグ的殺意が溢れかえってますね。いっそキタマクラフグにすればいいのに。
しかしながら、キタマクラは通常のトラフグなどより危険と言えます。
なぜキタマクラはそんなに危険なのか?
その理由は次項で説明致しましょう。
・キタマクラの毒性について。北枕と恐れられる毒魚の恐ろしい生態!
キタマクラの恐ろしさ、
それは「我々の常識のスキをつく生態」にあります。
みなさん、フグが危険なのは知っていますよね?
免許を持たない方は調理して食べようなんて思わないでしょう。
キタマクラの厄介なところ。それは、
一見フグっぽくないことです。
いわゆる「トラフグ」などは顔が丸っこいことや特徴的な模様などでいかにも「フグ」らしい顔をしているのですが、
キタマクラのおちょぼ口からはあまり「フグっぽさ」がないですよね。
色々な釣りの外道であるキタマクラですが、
前項に書いたように「カワハギ釣りの外道」である時がとても危険です。
知らない人から見ると「ちょっと変わったカワハギ」に見えるのです。
フグらしい顔をしてたら「フグかも……」と思うでしょうが、
「オレ、カワハギっすよ」みたいな顔で釣れるものですから、
気をつけましょう。
カワハギじゃありませんよ!!
カワハギとキタマクラ、この2種類の簡単な見分け方はありません。
釣りでよくわからないカワハギが釣れたら、
種類が特定できるまで食べたりしないようにしましょう。
ちなみに、カワハギの仲間に「ソウシハギ」という青筋模様の魚が居るのですが、
こっちも危険。
内蔵に猛毒を持っていることがあります。
絶対に食べたりしないでくださいね。
種類を特定! 大事です!
また、キタマクラの恐ろしいところその2。
有毒部位が直感的でない。
フグ毒で有名な「テトロドトキシン」。
特に有名なのは「キモ(肝臓)」や「ヒレ」、「卵巣」などにある毒でしょうか。
しかし、テトロドトキシンはフグの種類によって有毒部位がまるで違うんです。
高級なフグ料理店で使われるトラフグには「キモ」「卵巣」「腸」。
「クサフグ」は「キモ」「皮」「腸」「卵巣」「精巣」……さらには「肉」にまで毒が!
ではキタマクラはどうなんでしょうか。気になるところです。
キタマクラの毒は「キモ」「腸」「皮」。
特に皮の毒が強いようです。
この皮膚から出る強力な毒が人間の体内に入ると、死の危険があります。
キタマクラは「強い毒」と「フグっぽくない見た目」、
その2つが組み合わさって恐ろしい存在なんです。
・知は力。正しい知識で「キタマクラ」を「北枕にならない食べ方」で。
※あくまで理論上の話です。
フグの調理は非常に危険ですの
で、免許をお持ちでない方は絶
対にキタマクラを調理しないで
ください!!
さて強力な予防線を張ったところで。
「理論上キタマクラを食べられる方法」を書いていきます。
食べちゃダメですよ?
キタマクラの毒は「キモ」「腸」「皮膚」にあるので、これらをキレイに取り除けば食べることが可能です。
内蔵を取り出し、皮を剥ぎ、分泌される毒がついたまま調理しては危険なので、毒がある可能性のある部分(腹の内側など)はよく洗って間違っても毒が口に入らないようにしましょう。
ウワサですが、キタマクラはお刺身が美味しいとか……、火を通すとイマイチとか……。
絶対、素人調理で食べちゃダメですよ。
(念押し)