前回脊椎動物の眼には、光の通り道に血管を配置してしまうという設計ミスがあるけれど、イカやタコの眼にそんなミスはないというお話を書きましたが…
素晴らしい眼をもつイカ・タコも、重大な欠陥を抱える生き物だったのです…
軟体動物、イカ様・タコ様にも大きな欠陥があった
血管じゃなくて欠陥です。誤植じゃないですよ。
魚や、ヘビや、鳥の中にはかなり大きなものを丸呑みできるものがいます。ヒトだってちょっとしたものなら飲み込めます(カレーは飲み物とか言って、具も飲んでる人いません?)。
一方で、イカやタコだけではなくて、もっと広く節足動物・昆虫などもそうなのですが、彼らは食べ物を丸呑みにすることができません。
ペースト状にしなければ飲み込むことができないのです。
どんなに獰猛に見えても、節足動物や軟体動物はたべものをちまちま砕いて飲み込むのです。(カマキリも、捕らえた獲物をかじってたべていきますよね。ゴキブリがホウ酸だんごを丸呑みしたなんて話も聞きません。)
それは何故か…?
節足動物や軟体動物が食べ物を丸呑みできない理由
タコなんてあんなに体が柔らかいし、ヘビのように獲物を丸呑みしても良さそうなものです。でも、できない!
その理由は、消化管と神経の配置にあります。
彼らの頭部には背側に脳(神経)、腹側に口(消化管)があります。これは脊椎動物と同じです。
ところが胴体では背側に消化管、腹側に神経が通っています(エビの”背わた”を取るなんて言いますよね)。
そうすると、どこかで上下の配置を交換しなければなりません。
喉の部分で消化管と神経がクロスしているのですが、欠陥はここにあります。
はしご状の神経の間に消化管を通してしまったのです。
はしごの枠の中に消化管があるので、消化管が食べ物で膨れると神経に触れることになります。そうならないために、消化管が広がらない食べ方、口で細かく砕いてから飲み込まなければならない、という制約がついてしまいました。
お料理ついでに見てみよう!節足動物代表、イカの解剖レシピ
最初に言っておくと、神経を見るのは難しいので、ここでの目的は、か弱い食道とドロドロの胃内容物を見ることです。
- イカを用意します。スーパーで売っているスルメイカで大丈夫です。
- イカを置いて、筒状の部分の腹側を正中線に沿って切り開きます。
- すると大きな肝臓(塩辛に使う部分)が出てきます。肝臓の上に細い管が載っており、これが腸と食道、イカのてっぺん側にあるのが胃です。
- 腸&食道はどちらも頼りなげな器官なので、どちらが食道かわからなくてもこれでは丸呑みは到底無理だろうということがわかります。これで目的は達せられるわけですが、どちらかはっきりさせたければ、管を口までたどってみれば良いです。
- 胃を切り開いてみます。運良く胃に食べ物が入っていても、ドロドロでなんだかよくわからないとおもいます。
- あとは料理しておいしくいただきます。イカに感謝して「ごちそうさまでした」と言います。
おいしかったですか?
お腹と知的好奇心は満足したでしょうか。
それでは今回はここまでです。ありがとうございました。