最強動物論争だー。
以前、ホッキョクグマすら倒すクズリを紹介しました。(リンク)
中型犬ほどのサイズにもかかわらずその凶暴性と強靭な身体能力で北の最強動物候補として名高いクズリですが、同じイタチ科にはとんでもないライバルがいるのです。
このイタチ? だかなんだかよくわからない生物ですが、コイツも最強動物候補の常連。見た目からは想像できない脅威の性能でのし上がってきた猛者。
当然、こういった疑問に立ち返ってしまいます。
「いったいどっちが強いんだ?」
「ラーテル」と「クズリ」、強さ・ポジション・評判が近しい2種について見てみましょう。
・どっちもイタチでどっちも強い。ラーテルとクズリの違いはどんなところ?
「ラーテル」「クズリ」どちらもイタチの仲間に分類されます。
イタチ……。日本人としてはあんまり馴染みないですね。キツネやタヌキのほうが身近な「野生動物」って感じがあります。イタチの民話とかマイナーですからね。
しかしイタチの仲間は意外に多く、カワウソ、アナグマ、テンなどいろいろな生き物が属しています。(ニホンカワウソは絶滅したけどね)
ラーテルの分類は「食肉目イタチ科ラーテル亜科ラーテル属」。
このラーテル属に含まれる生き物はラーテルだけ。オンリーワンです。
インド・ネパール以西、アジアの西側やモロッコ・エジプトなどの北アフリカ、サハラ砂漠より南の広いエリアに生息しています。
体長は60~70センチ、尻尾も含めた全長は80~110センチ。体重は10キログラム程度のサイズ。最強生物にランクインするにはちょっと物足りないですが……。
しかしラーテルにはちょっとめずらしい武器……防具があります!
ラーテルは頭から背中にかけての皮膚が非常に分厚く伸縮性があるので、並大抵の攻撃ではダメージを受けないのです!
……え? ちょっと防御力が高いくらいじゃ地味?
いえいえ、とんでもございません。
ただ防御力が高いだけではもちろんランクインなどされませんが、ラーテルにはもう一つの強力な武器である「カギヅメ」があります。
防御力だけでなく攻撃力も手に入れたラーテルは手がつけられないパワー! 繁殖期で凶暴になるとなんとライオンにまで襲い掛かって追っ払うというガッツの持ち主。時には群れのライオンにまで襲い掛かる負けん気の強さ……(無謀さというべきか)。
さらにさらに、小型獣や昆虫、果物なども食べるラーテルですがなんと
毒ヘビまで食べます。
毒生物を食べる生き物は毒に対する耐性がつきものですが、ラーテルはそこまで強い耐性があるわけではなく、一時的に行動不能になるものの復活する、というちょっとした耐性を持っています(そこまでして毒ヘビが食べたいか)。またアゴの力も強く、カメくらいなら甲羅をバキバキ割って食べてしまう……。
さらに若干近縁であるスカンクのように臭腺を持ち、臭い液体を噴射して攻撃することも。
さて、ラーテルのスペックの高さ、器用さ、そして不器用さを見ていただいたわけですが。
一方のクズリはどうなんでしょうか?
サラッとまとめてみましょう。
・ラーテル
- イタチ科ラーテル属
- 砂漠や丘陵などに生息
- 分厚い皮膚による防御力と発達したカギヅメ
- 臭腺から臭い攻撃もできる
・クズリ
- イタチ科クズリ属
- 北欧や北アメリカ大陸北部・ロシアなどに生息
- 雪上でもすばやい動きと強力なアゴによる攻撃
- 10キロ以上小走りできるスタミナ
うーん、甲乙つけがたいですなー! 個人的にはクズリを応援したいですね、寒いところの生まれなので。
・ラーテルVSクズリ。強さの質はビミョーに違う?
さて、ラーテルとクズリのスペックについて長々と説明しましたが……。
その上でいったいどっちが強いのか? 考えて行きたいと思います。
ラーテルとクズリは住むところが全く違います。
かたやアフリカや西アジア、かたや北欧や北米……。地域が違っても同じニッチ(生態的地位。今回の場合は「イタチ科の凶暴な中型雑食動物」という意味で同じ立場)を生きているんですね。
なので本来、彼らが相まみえることはまずありえないのですが、戦力としはそこまで差があるとはいえないでしょう。
ここではシンプルに「攻撃力」「防御力」「素早さ」「特殊能力」いうゲームみたいなステータスで彼らを比較してみます。
まず「攻撃力」。
ラーテルの武器はカギヅメとアゴ。
クズリはなんといっても強力なアゴです。
数の上ではラーテル有利に見えますが、なんといってもクズリは実績が違います。
トナカイなどの何倍、何十倍の体重であろう生き物を樹上から急所を破壊する威力! あわれ脊髄を損傷した獲物は動けぬままクズリに食べられてしまう……。
ラーテルがライオンやハイエナを追い払えるのはなんといっても防御力の高さゆえです。相手を一撃で倒すのではなく、防御力に裏打ちされた手数の多さがあります。これは決定力の無さの裏返し、ととることもできます。
また、クズリには飼育下でホッキョクグマを殺したという記録もあり、
こと攻撃力の高さでいえばクズリが上をいく、という結論を導き出します。
次に「防御力」。
これはラーテルの圧勝でしょう。ラーテルがライオンに勝てるのも、分厚い皮膚の防御力があってこそ。ライオンに噛み付かれても、そうりゃと身をよじって抜け出し反撃にうつることができます。
対するクズリは防御力に関してはラーテルに譲らざるをえません。クズリにはラーテルほどの皮膚の柔軟性はありませんし、相手のアゴに捕らえられてしまっては抜け出すことは難しいでしょう。
次に「素早さ」。
これは互角、あるいは僅かにクズリが上、と捉えます。
どちらも素早く相手に躍りかかり、速攻の一撃を喰らわせることは容易でしょう。スプリントだけでなくマラソンも得意な2種。
しかしながらクズリには「雪上でも動きが落ちない足の構造」があります。クズリが獲物を捉える裏づけがこの能力。クズリの極力な攻撃力が活きるのは、雪上での素早さのためであることに他なりません。
最後に「特殊能力」。
これはそもそも優劣がつきにくいジャンルですが、あえていうのならばラーテルが上でしょう。
ラーテル、クズリともに臭腺を持ち臭い液体を噴出することができますが、ラーテルには毒ヘビにかまれても復活できる毒耐性があります!これはクズリにはない特徴(まず生息域にどのくらい毒ヘビがいるのかすら不明)。タイマンでのアドバンテージにこそなりませんが、審査員にアピールする材料としてはなかなか破格でしょう。
総じて、
ラーテルの強さは「しぶとさ」。
攻撃をものともしない防御力とタフネス、凶暴さは相手の戦意を削ぐ能力としては最高でしょう。何度攻撃しても襲い掛かってくるラーテル、敵からすればたまったものではありません。油断すればカギヅメとアゴによる攻撃で痛手を負わされるかも……。それならラーテルからは逃げたほうが得策ですよね。
クズリの強さは「殺意」。
絶対に逃さずブチ殺す!! とでもいいたげなスペックはクズリが「小さな悪魔」と呼ばれるゆえんに違いありません。逃げても逃げても追いかけてくる黒い影……。クズリの餌食は最後に死神を見たのかもしれません……。
これらを前提に「どちらが有利でもない状況での1対1」を想定したとき……。
ラーテルのほうが勝率が高いでしょう。
クズリの攻撃力が活かせるのはあくまで雪上や、相手がクズリより機敏でないときです。対してラーテルの防御力はオールラウンド、継戦能力の高さは折り紙付きです。
クズリの攻撃がクリーンヒットすればラーテルを倒すことは可能でしょうが、泥仕合になったときに強いのがラーテル。クズリの一撃必殺が当たらない限り勝利は難しい……と見ます。
ガチ考察って楽しいですね!! えへへ!!
・クズリはいなかったけど……。ラーテルは日本の動物園にいるのか?
あー楽しかった……。
さて、クズリの記事で言及しているのですが、
現在クズリは日本の動物園に展示されていないです。
ではラーテルは?
いるんですね~!!
日本で唯一のラーテルがいる動物園となっておりまーす!!
ゾウ・キリン・カバ・サイ・ゴリラなどメジャーどころは当然のこと、
マヌルネコやツチブタ、コビトカバのようなちょっとマニアックな動物たちまで展示されている東海の雄です。
最強動物候補がたくさんいるから
みんなで行きましょう! 東山動植物園!!
クズリはもう海外へ行こう!!