こどもの頃、宝物ってどうしてました?
私はよく分からないお菓子の缶に入れてました。おもちゃとか。
だいたいそうですよね。大切なものはどこかにしまっておく。こどもに限らず人間は蓄えたがる生き物ですから。(貯金とか)(食材とか)(エトセトラ)
人間に限らず、リスもドングリを埋めますし、クマも獲物を隠しておくんですよね。後で食べるために。ハムスターなんて頬袋にパンパンにエサ詰め込みますからね。なんて直接的な貯蔵だ。
まあ、食べるならわかりますよね。食べるために保管しておく。合理的です。納得できます。
しかし、この理屈では納得しがたいヤツもいるのです。
今回のテーマは「モズ」。
「モズのはやにえ」という、一種代名詞的な習性が有名な本種ですが、言葉だけがひとり歩きしてしまってその本質を知っているかと言われると途端に不安になってしまうタイプの地味なメジャー鳥です。
さあ、明日学校で喋れないちょいホラーな鳥、モズについて見てみましょう。
・モズってどんな鳥? 大きさ、鳴き声、その他の特徴から。
モズは「スズメ目モズ科モズ属」に類している鳥です。
見た目……。見た目地味めですよね。少なくともハデではない。よく見るとシブい配色ですが、顔立ちがスズメっぽいのでナイスミドルって雰囲気でもないです。外見的特徴としてはちょっと鈎状になっているクチバシがあります。
大きさは20センチほど。スズメより一回り大きいくらいですね。ジャンルとしては小鳥です。
生息地は日本、中国、朝鮮半島、ロシア南東などいわゆる極東方面。日本では沖縄以外の全国に分布しています。
はやにえする鳥「モズ」の漢字は鳴き声から!?
モズは漢字で「百舌鳥」と書きます。
これは百舌が非常に器用な鳥で、いろいろな鳴きマネができることから
「百の舌を持つ鳥」となったんですね。(「鵙」、という漢字もあるよ)
モズのオスは、この鳴きマネの器用さでメスにアピールするのです。
……モズのメスはモノマネに魅力を感じるのか……。
また、モズは「高鳴き」という鳴き声も出します。
これは周りのモズとの縄張り争いの時期(秋)になると攻撃的な「ギュィギュィ」っとした鳴き声を上げて縄張りをアピールするためです。
縄張り争いに勝利したモズはたった1羽で冬を越します。孤独な越冬。
ちなみに、イギリスでは別名を「屠殺鳥」、
ドイツでは「絞め殺す天使」の異名があります。
物騒だな。
「天使」って付けてもバイオレンスをごまかせないぞ。
でもこんな物騒な異名にもちゃんと理由があるんですよ。
その理由こそ、モズの最大の特徴である習性、
「早贄(はやにえ)」です。
・モズの習性、はやにえとは? 見られる季節と串刺しにするその意味ってなんだ?
秋になると、木の枝にカエルやらバッタやらが突き刺さっている姿を見かけることがあります。
「あー秋だなー」と風情を感じるにはちょっとハードな光景ですが、
これこそ「モズのはやにえ」。
モズは狩った獲物を枝や有刺鉄線などに突き刺す習性があるのです。
「早贄」と書くのですが、これは「秋の最初に捧げられている生贄」という意味。秋とともに現れる風物詩みたいなものです。
虫のたぐいが苦手な人にとってはかなりホラーな習性です。
実は、この習性の意味は未だ解明され切っていません。
様々な説が提唱されていますが、決定的な証拠がない状態です。
・「冬に向けての備蓄ではないか説」
備蓄にしては食べないまま忘れ去ることが多い。また、十分に餌がある餌付けされたモズもはやにえを行うので、この説では説明がつかない。あと備蓄にしては他の鳥に狙われやすすぎると思う。
・「突き刺したほうが食べやすいんじゃないか説」
モズは猛禽類と違って足の力が弱いので、獲物を上手に食いちぎるのが難しく、獲物を固定して食いちぎりやすくしているのではないか、という説。
ただ、そうだとすると食べ残しや、そもそも食べてすらいないはやにえもたくさんあるのでよくわからない。
・「縄張りをアピールするためではないか説」
高鳴きで縄張り争いするじゃん。
はやにえいらないじゃん。
……と。
いまいち「コレだ!」と気持ちよく納得できる説がないというか……。
モズってものすごく器用で、多少大きい獲物でもキレイに突き刺すんですよね。
本当にただの趣味でやってるのかも。
「秋になると葉が落ちるから気持ちよく突き刺せる季節だぜ!」とか。
・モズのはやにえは怖い? 庭にされてたら縁起悪くない?
▲ はやにえされたかえるさん「グサッッ」
まー……。正直怖いですよね。はやにえされてたら。
よりによって「虫」「カエル」「トカゲ」、
場合によっては「ネズミ」「小鳥」(!)まで突き刺してあるんですから。
突き刺し魔ですよ。
かつては「モズが鳴く夜には人が死ぬ」なんて言いがかりレベルの迷信があったくらいですから、はやにえするモズは怖がられていたのかもしれません。カラスが鳴く日もたぶん人は死ぬけど。
ただ害はありませんよ。苦手な人にとって不快なだけで。
温かい目で「ああ、またモズが食べきれない獲物を取っちゃって……」と見守ってあげてください。別に悪さする鳥じゃないんですから。
▲ 何かを誤った「温かい目」